共鳴部分の大きさからは信じがたい豊かな音量、
限界まで突き詰められた匠の技が生み出す緊迫の音色。
四角く組んだ四枚の木片の両面に動物の皮を張った、つまり打楽器の太鼓のような形状の「胴」を共鳴部分として、それに棹を貫通させ糸を張っただけの一見とてもシンプルな構造の『三味線』
しかしそのルーツといわれる中国の『三絃(サンシェン)』が、琉球(今の沖縄)に渡って『三線(サンシン:蛇皮線)』となり、日本に伝来して現在の『三味線(シャミセン)』として確立されるまでに、実に様々な創意工夫がなされています。
永禄年間(1558~1569)に堺の港に伝来した『三線』は、同族の楽器である琵琶の奏者、琵琶法師たちに奏でられたため、その奏法の影響をうけ、それまでの小型のピック状のものから、大型の撥でひくようになり、さらには、その撥先が胴皮に当たる打楽器的な撥音を添えるようになりました。
また、日本本土ではニシキヘビの皮の入手が困難であったため、猫や犬の皮が胴皮として利用されるようになりました。
他にも棹を3分割する『継手』の技術、『天神』と呼ばれる糸巻き機構、わざとビビリ音を出すための『サワリ』、共鳴に影響を与えるという『綾杉彫り』と呼ばれる胴の内側の加工。そして皮張りの技術まで、長い年月を経て完成された究極の撥弦楽器なのです。